沖縄には300余の城(グスク)が存在すると言われ、その一部は世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」に登録されています。珊瑚礁から生成される琉球石灰岩の切石で積まれた石垣が特徴で、城壁は緩やかなカーブを描いています。
この記事では世界遺産に登録されているグスクを南側から順番に紹介します!
首里城(しゅりじょう)
1429年に北山(ほくざん)・中山(ちゅうざん)・南山(なんざん)の3つの国が統一されて琉球王国となりました。首里城は琉球国王が住んでいた城で、1879年に明治政府によって沖縄県の設置が宣言されるまでの約450年もの間、政治や文化の中心地でした。その間、何度か焼失と再建を繰り返しましたが、1945年に沖縄戦で壊滅的な被害を受けました。その後復元されるも2019年の火災で正殿を含む主要な建物が焼失してしまいました。現在復元工事中で、正殿は2026年に復元が完了する予定です。(2024年7月現在)
首里駅から徒歩15分、車の場合は守礼門付近に地下駐車場があります。
中城城(なかぐすくじょう)
中城城跡は中城湾を望む標高160mの高台にある城跡で、日本100名城にも選定されています。写真は二の郭で、石垣の上からは、西に東シナ海、東に太平洋、勝連半島や知念半島も見渡すことができます。布積みと呼ばれる石積技法の城郭が曲線を帯びており、目をひく美しさです。
沖縄のグスクの特徴でもある美しいアーチ型の城門は、1853年にペリーが来島した際にエジプト式と評しています。城内には雨乞いの御嶽など八つの拝所があります。
入口から正門まではやや離れていますが、電動カートで正門まで送迎してもらえるので経路順に回ることができます。
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勝連城(かつれんじょう)
うるま市にある勝連城跡は、沖縄の世界遺産の中で最古のグスクです。石灰岩の石垣で表現される曲線美も見所です。発掘調査では中国の古銭や陶磁器類が多く出土しており、勝連の地が海外貿易の中心地として栄えたことを物語っています。敵の侵入を防ぐための歪曲した階段を登っていくと、眼下に美しい海を見下ろすことができる絶景スポットでもあります。
城内への入場券は歴史文化施設のあまわりパークとセットになっており、営業時間外は立ち入りができないので注意が必要です。城内入口からはカートで登り口まで送迎してもらえます。那覇空港からは車で1時間ほどで、周辺の人気観光スポットである海中道路や果報バンタとセットで訪れるのがおすすめです。
座喜味城(ざきみじょう)
琉球王国が統一され尚巴志が初代国王となった頃、地元領主の按司・護佐丸(ごさまる)によって築かれた城です。国王に対抗する勢力(北山)を監視する目的でつくられ、1420年頃に完成しました。護佐丸は中城城の増築にも携わっている築城の名手でもあり、沖縄に現存する最も古い石造りの二の郭のアーチ門には、他のグスクでは見られないクサビが真ん中に打ち込まれています。
付近の観光スポットとしては、残波岬や真栄田岬があります。
今帰仁城(なきじんじょう)
沖縄本島北部に位置する城で、13世紀末頃から築かれ始め、15世紀前半には全長1.5kmの壮大な石垣と10もの曲輪を構える大きな城になりました。1609年に薩摩軍によって攻められ廃城となりましたが、その後も聖域・拝所として存続しました。現在は日本100名城にも選定されています。
城を登っていくと、城郭とその向こうに沖縄の美しい海を望むことができます。この写真は大隅(ウーシミ)を上から見た様子で、戦時に備え馬を養い、兵馬を訓練した場所として伝わります。
那覇空港からは車で1時間40分ほどかかりますが、近くに美ら海水族館や古宇利島があるので、あわせて訪れたいところです。
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知っておくともっと楽しめる予備知識
そもそも琉球王国は、1429年〜1879年まで約450年にわたって存在した王制の国です。12世紀頃から琉球諸島各地に「按司(あじ)」とよばれる豪族が現れ、彼らが互いに覇権を争いました。やがて、1429年に尚巴志が北山、中山、南山を統一し(三山統一)、琉球王国が誕生したのです。
琉球王国は海外との貿易を通して発展してきました。特に中国とは、冊封(さくほう)という関係で結ばれていました。冊封とは、中国国王の臣下となる代わりに、その国の王として認めてもらうことです。そのため琉球国王が変わる時は、中国皇帝から冊封使が琉球王国にやってきて、首里城で新しい国王を承認する儀式を行っていました。
一方で、1609年に日本の薩摩藩が琉球に侵攻してからは、表向きは中国の支配下にありながら、薩摩と徳川幕府の従属国であるという両属体制の関係にありました。ところが明治維新で近代化へと動き出した日本は、1879年に琉球に軍と警察を派遣し、沖縄県の設置を強行しました。国王の尚泰王は上京を命じられ、琉球王国は滅亡しました。当然ながら清の反感を買い、日本と清の関係は悪化していくこととなります。
今回紹介したグスクはグスク時代(およそ12~16世紀頃まで)を象徴するもので、グスク内からは生活の痕跡を示す出土品が多く、村の拝所としての役割もあることから、城塞、防御集落、聖域といった説が考えられています。
2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として世界文化遺産に登録され、今回取り上げた城以外にも、園比屋武御嶽石門、玉陵、識名園、斎場御嶽が含まれています。ぜひ沖縄の歴史も感じながら観光してみてください。